『コトレシピ ライフスタイル版』の編集長の話を頂いたときに、
ふと思い出したのが『暮らしの手帖』だ。
「これはあなたの手帖です。
いろいろのことが ここには書きつけてある。
この中のどれか 一つか二つは
すぐ今日 あなたの暮らしに役立ち
せめてどれか もう一つか二つは
すぐには役に立たないように見えても
やがて こころの底ふかく沈んで
いつか あなたの暮らし方を変えてしまう・・・・」という巻頭言は、
私もいたく共感したことを覚えている。
その雑誌を作った伝説の編集長、花森安治について書かれた
「花森安治の仕事」という本を読んだ。
そこには花森が消費者目線で、とことん「気持ちのいい暮らし」を考え抜いたという、編集のスタンスが書かれていた。広告を一切入れず、独立独歩、言いたいことはきっぱり言う。それでいて日本のメーカーが、もっといいものが作れるようにとの愛情も欠かさない。
しかし衝撃だったのは、花森がかつて大政翼賛会で国威宣揚のためのコピーを書いていたという事実。「欲しがりません、勝つまでは」も実は花森のコピーだったという経緯が紹介されている。けれども戦争に加担したという呵責の念が、戦後、花森を変えた。
「こんどの戦争に、だれもかもが、なだれをうって突っ込んでしまったのは、ひとりひとりが、自分の暮らしを大切にしていなかったからだと思う。人は暮らしの中身が貧しいと投げやりになる。(中略)あったかい家庭があれば、戦争にならなかったと思う。そういう家庭をつくるためには、女の人がだいじだ」—-それが『暮らしの手帖』の原点だったんだと思う。
いままた、なんとなく危なっかしい感じがする世の中で、
私たちはあったかい家庭、人とのつながりを大切にする暮らしを、
大事に育んでいかなければと思うのです。